お隣の女性は今月85歳になると言う

特に若作りもしていない
ナチュラルな人だけど

シミもシワもなんにもないから
間違いなく10歳は若く見える

5年前にここに引っ越してきて
ご挨拶に伺ったとき
この人は変わった人だなぁと思った

さらに関わっていくにつれ
頑固でとても気が強いこともわかった

その性格が災いしてか
みんなこの人を嫌っている

だけどなぜだかわからないが
私はこの人が悪い人とは思えない

耳が遠いからか一度で話を理解しない人

頑固だから自分の考えを曲げない人

夜遅くまで隣り合った寝室の壁の向こうで大音量でテレビを見ている人

時にはそのテレビの音と重なって
この人のいびきが聞こえてくることもある

そんな感じで何だかんだ
迷惑を被っている私だけど

でも私はこの人のことを
どういうわけか憎めない

先程この人が使わないからと言って
今年の日めくりを私にくれた

B4判くらいありそうな大きさで
板金屋さんの名前入りの
オシャレじゃない堅苦しい日めくり

その日めくりを私に手渡しながら

紙を束ねる枠の部分が危ないからと
「手を切るんでないよ」

とひとこと言って
お隣さんは帰っていった

まるで小さな子供に言い聞かせるようなその一言が耳について離れない

そういえば母がもし生きていれば
お隣さんより2つ上だったんだなと
あとでふと気がついた

人の縁とは不思議なもの

お隣さんとはもしかしたら
前世でも知り合っていたのかも知れない

そう思ったら
なんだかとてもしっくりくる気がした