雪兎の春
不運や悲しみを一人押し込めて
冷たいそれを震える指先で
雪兎のように小さく飾り立てた
不運なせいだ
悲しいからさ
すべて雪兎のせいにした
溶かすのが惜しくなって
理由もなく守るようになっていた
手の平はかじかんで痛いのに
冬の雪兎をいつまでも手離せないまま
意固地になっていたんだよ
悲劇という言い訳がなくなれば
本当に私自身のせいだと
気付いてしまいそうで怖かったのだ
もう不運など過ぎ去ったはずなのに
もう悲しまなくてよいはずなのに
冬はとうに終わったというのに
春の陽射しになぜ怯えたのだろう
不運や悲しみ
誰かと分かち合えたなら
遅い雪解けの日も
そう遠くないだろうか