開かない扉　見えない窓
聞こえない声　知らない人
気づかないだけ　忘れているだけ

思い返すとろくな思い出がない
具体的には思い出せないけど
どうやら楽しいことも悲しいことも
雪がとけるように等しく忘れるようだ

どうせ忘れてしまうなら
他人の幸せでも覗いてみようかな
家族連れの笑い声の
手を繋いで歩く二人の
どこからか聞こえる鼻歌の
だって今日は

願い事は叶わないと知ってる
主人公じゃないと知ってる
こどもでもいいこでもない僕に
サンタクロースはこないと知ってる

どうせ叶わないなら
他人の幸せでも願ってみようかな
花束を抱えて歩くあの人の
電車を待っているあの人の
ひとり留守番しているあの子の

ふと見上げた夜空の星が
あまりに綺麗でため息が出た
今の僕にちょうどいい幸せ
思わず涙と笑みがこぼれた

メリークリスマス
誰にも聞こえないように
メリークリスマス
誰かに届いたらいいな

■作者メッセージ
読んでいただきありがとうございます。