ポエム
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快楽音楽主義者
Rickie Lee Jonesが歌う「My funny Valentine」ほど心に響く
つまり、心の琴線に直截的に触れる歌をこれまで聴いた事がなかったのだが、
この感動はもう何年前のことだらう。
彼女の歌声が忘れられず、
その時から彼女の作品は必ず聴く事になったのだのであったが、
その彼女の歌声はChet Bakerのそれにも勝る物で、
My funny Valentineがこんなにも美しい歌だった事を
改めて知らしめられた彼女の歌声は、
実に滋味深く、美し過ぎるのだ。

それは、私の心の共鳴板と確実に共鳴してゐて、
彼女の歌声は私の頭蓋内で猛烈な増幅をし、頭蓋内部で美しい轟音となって
鳴り止まなくなってしまったのだ。

それ以来、私はRickie Lee Jonesに勝るとも劣らぬ歌声を求めて
手当たり次第にポップスを聴くやうになったが、
Norah Jonesでさへも、
Rickie Lee Jonesを超える事はなかったのだ。

しかし、それをいとも簡単に超えた歌声の持ち主が現はれた。
その名は元ちとせと言ふ歌姫で、民謡に本源を持つ彼女の歌声は、
世界的に注目されべき物である筈なのだ。

だからといって、底知れぬ私の欲は、
それで満足することはなく、
更なる美声を求めて、
ついに、現代音楽家のアルヴォ・ペルトに行き着いたのだ。
ペルトが生み出す荘厳で静謐な音世界は、
美声の洪水に溺れる私の快感を実によく満たし、
それは現代音楽家・柴田南雄の風音にも似た何重もの音色の歌声が重ねられ、
声の滝が下り落ちるのではなく、
地から立ち上るやうに湧き上がる音圧を持つ楽曲に圧倒される快楽は、
武満徹の刹那的な、しかし、永劫を含有する優れた音楽を聴く快楽をも引き寄せて、
それらは私の思考の癖を能く表してゐるのだ。

つまり、音楽に沐浴するが如くにじっくりと浸かりたいと言ふ快楽に溺れる時間が、
何事にも耽溺せずにはをれぬ私のものに執着する執着心の欲深さが
私をして欲深い存在のその本性が浮き彫りになる。
20/01/08 17:06更新 / 積 緋露雪



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