そいつは立ち上がりし
不図気付くと俺は何処かはしれぬ見知らぬ場所で覚醒した。
開けられた瞼を再び閉ぢると夢の残骸が転がってゐないか探してみたのだが、
見えるのは吾が五蘊場が表象せし意味不明な映像ばかり。
仕方なく、再び瞼を開け、前方をかっと睨んだところで、
何が解る訳でもないのであるが、
俺は自分のゐる場所を何としても知りたくて、
ぎろりと辺りを眺め回したのである。
しかし、其処は余りにも殺風景で、
砂漠のやうでゐて、砂漠に非ず、
何やら月面のやうにも思へなくもないのであるが、
此処は地上とは別の何処かのやうな気がしないでもなかった。
と、不意にそいつが地平線の彼方で立ち上がり、
時空を食ひ始めた。
そいつが時空を喰らった後には
余りにありきたりな表象でしかない闇が現はれるのであるが、
そいつはその闇をもまた喰らひ、
その後に時空は時空の存在を全く失い、
餅が焼かれてゐる時にぷくりと膨らむやうに
その穴があいた筈の時空の穴へと時空は吸ひ寄せられて、
その穴に吸ひ込まれた時空は時空外でぷくりと膨れて、
新たな完結せし宇宙が生まれるやうなのであった。
そいつは、さて、神の眷属なのか、と、
余りの馬鹿らしさに俺は嗤はずにはをれなかったのであるが、
尤も、そいつは最後に俺を喰らふのは間違ひない。
手当たり次第に時空を喰らふそいつは
銀河が衝突するときに爆発的に星が誕生すると言はれるStarburstのやうに
次々と矢継ぎ早に一つの完結した宇宙を生み出しては、
俺を一睨みしては哄笑するのである。
俺は神域へとやって来てしまったのであらうか。
辺りが殺風景なのは、まだ、何ものも生まれる未然の状態だからに違ひない。
まだ生まれない時空とはかうも殺風景なのかと、独り合点しながら、
とんだところに来てしまったものだな、
と、これまた、余りにも間抜けな鈍い思考でぼんやり考へてゐたのであるが、
俺は、しかし、覚醒した筈だと思ひながら
鈍い思考を活性化させようと一発頰を殴ってみるのであった。
何の事はない、それが全く痛くなく、
つまりは俺は覚醒などしてをらず
未だに夢の中にゐるに違ひないのであった。
それにしても、時空を喰らふそいつは何ものなのであらうか。
と、そんな事を漠然と思ってゐた俺は、
更にそいつを喰らふものが出現した事で
驚愕したのである。
そいつを喰らったものは
何なのかと目を凝らして見てみるのであるが、
俺には時空にばっくりと開いた大口しか見えないのであった。
さて、そいつが喰らはれた後、
此の世界がどうなったかと言ふと、
俺がゐる世界はひっくり返されたかのやうに
そいつが存在してゐて補塡されてゐた時空に
全的に吸ひ込まれて、
世界が裏返ったのである。
そして俺は反=俺として、その世界に存在してゐたのであらうか。
開けられた瞼を再び閉ぢると夢の残骸が転がってゐないか探してみたのだが、
見えるのは吾が五蘊場が表象せし意味不明な映像ばかり。
仕方なく、再び瞼を開け、前方をかっと睨んだところで、
何が解る訳でもないのであるが、
俺は自分のゐる場所を何としても知りたくて、
ぎろりと辺りを眺め回したのである。
しかし、其処は余りにも殺風景で、
砂漠のやうでゐて、砂漠に非ず、
何やら月面のやうにも思へなくもないのであるが、
此処は地上とは別の何処かのやうな気がしないでもなかった。
と、不意にそいつが地平線の彼方で立ち上がり、
時空を食ひ始めた。
そいつが時空を喰らった後には
余りにありきたりな表象でしかない闇が現はれるのであるが、
そいつはその闇をもまた喰らひ、
その後に時空は時空の存在を全く失い、
餅が焼かれてゐる時にぷくりと膨らむやうに
その穴があいた筈の時空の穴へと時空は吸ひ寄せられて、
その穴に吸ひ込まれた時空は時空外でぷくりと膨れて、
新たな完結せし宇宙が生まれるやうなのであった。
そいつは、さて、神の眷属なのか、と、
余りの馬鹿らしさに俺は嗤はずにはをれなかったのであるが、
尤も、そいつは最後に俺を喰らふのは間違ひない。
手当たり次第に時空を喰らふそいつは
銀河が衝突するときに爆発的に星が誕生すると言はれるStarburstのやうに
次々と矢継ぎ早に一つの完結した宇宙を生み出しては、
俺を一睨みしては哄笑するのである。
俺は神域へとやって来てしまったのであらうか。
辺りが殺風景なのは、まだ、何ものも生まれる未然の状態だからに違ひない。
まだ生まれない時空とはかうも殺風景なのかと、独り合点しながら、
とんだところに来てしまったものだな、
と、これまた、余りにも間抜けな鈍い思考でぼんやり考へてゐたのであるが、
俺は、しかし、覚醒した筈だと思ひながら
鈍い思考を活性化させようと一発頰を殴ってみるのであった。
何の事はない、それが全く痛くなく、
つまりは俺は覚醒などしてをらず
未だに夢の中にゐるに違ひないのであった。
それにしても、時空を喰らふそいつは何ものなのであらうか。
と、そんな事を漠然と思ってゐた俺は、
更にそいつを喰らふものが出現した事で
驚愕したのである。
そいつを喰らったものは
何なのかと目を凝らして見てみるのであるが、
俺には時空にばっくりと開いた大口しか見えないのであった。
さて、そいつが喰らはれた後、
此の世界がどうなったかと言ふと、
俺がゐる世界はひっくり返されたかのやうに
そいつが存在してゐて補塡されてゐた時空に
全的に吸ひ込まれて、
世界が裏返ったのである。
そして俺は反=俺として、その世界に存在してゐたのであらうか。