反復
反復にこそ時間の謎が隠されてゐる。
反復と言ひ条、そのどれもが全く同一の相はなく、
返って反復がその位相において
全く同じ位相が見つかると言ふ事は虚妄に過ぎぬ。
例へば時計の振り子運動は全く同じに見えるかもしれぬが、
その反復には午睡を誘ふ魔術が潜んでゐて、
振り子をぢっと見つめてゐると何だか心地よくなり、
渦巻く時間の陥穽に陥るのだ。
反復運動が円運動に変換可能なことは
オイラーやフーリエを持ち出すまでもなく、
自明の事と言へ、
その円運動に吾が五蘊場には或る周期を持った円運動が巻き起こり、
知らぬ間に俺はその円運動に呑み込まれる。
その五蘊場の円運動は各各近しい位相を見せるのであるが、
それは一度として同じ円運動が五蘊場に表象される事はなく、
例えば、その円運動が五蘊場で大渦を巻いてゐるならば、
吾はやがてその大渦に呑み込まれ、
何とも羽化登仙するかのやうな心持で、
睡魔に襲はれ五蘊場は睡眠相に相転移し、
吾はその総出に埋まるのだ。
さて、反復には既に其処に円運動、
若しくは球運動、
若しくは∞次元球運動が控へてゐて、
その反復は一度たりとも同じ相はありはしない。
嗚呼、この感覚が大好きなのだ。
この何とも言へない快楽には、
何ものにも譲れぬ心地よさが全身を占め、
吾はこの全的にその眼前の光景を肯定する睡眠の中へと飛び込むのである。
夢は反復の最たるものなのかもしれぬのだ。
吾は眼前の光景が夢とはつゆ知らず、それでゐて、
何とも奇妙な現実が蓋然性が入り込む余地なく、
確率一の割合で存在し、
つまり、それは、最早、己の逃げ場がない現実世界で、
さう認識する吾はその完全の光景を全肯定して受容するのだ。
これが睡眠時において毎日反復され、
夢魔の思ふがままに操られる吾が其処にゐる。
そして、それに吾は満足すら覚えながら、
夢魔の思ふがままに其処にゐる事を強制されてゐるのであるが、
それを強制とは全く感じる事なく、
吾は夢魔が表出させる反復の大渦巻きに呑み込まれる事を是とするのだ。
つまり、反復は創造の時間とも言へ、
夢魔が起こす反復に呑み込まれることで吾は毎回生まれ変わるのだ。
再生。
反復は畢竟、再生の異名でしかなく、
それ故に反復は心地よいのだ。
嗚呼、この時間が永劫に続くことを渇仰するのは一体誰だ。
それは、吾以外あり得るのか。
さうして、吾は大時計の振り子の前から徐に離れる事で、
吾をぶった切る快感を味はふ。
秋空に消ゆるは誰の影なりぞ
鱗雲何を捨つるか迷ひつつ唯朔風のみが胸奥に吹く
反復と言ひ条、そのどれもが全く同一の相はなく、
返って反復がその位相において
全く同じ位相が見つかると言ふ事は虚妄に過ぎぬ。
例へば時計の振り子運動は全く同じに見えるかもしれぬが、
その反復には午睡を誘ふ魔術が潜んでゐて、
振り子をぢっと見つめてゐると何だか心地よくなり、
渦巻く時間の陥穽に陥るのだ。
反復運動が円運動に変換可能なことは
オイラーやフーリエを持ち出すまでもなく、
自明の事と言へ、
その円運動に吾が五蘊場には或る周期を持った円運動が巻き起こり、
知らぬ間に俺はその円運動に呑み込まれる。
その五蘊場の円運動は各各近しい位相を見せるのであるが、
それは一度として同じ円運動が五蘊場に表象される事はなく、
例えば、その円運動が五蘊場で大渦を巻いてゐるならば、
吾はやがてその大渦に呑み込まれ、
何とも羽化登仙するかのやうな心持で、
睡魔に襲はれ五蘊場は睡眠相に相転移し、
吾はその総出に埋まるのだ。
さて、反復には既に其処に円運動、
若しくは球運動、
若しくは∞次元球運動が控へてゐて、
その反復は一度たりとも同じ相はありはしない。
嗚呼、この感覚が大好きなのだ。
この何とも言へない快楽には、
何ものにも譲れぬ心地よさが全身を占め、
吾はこの全的にその眼前の光景を肯定する睡眠の中へと飛び込むのである。
夢は反復の最たるものなのかもしれぬのだ。
吾は眼前の光景が夢とはつゆ知らず、それでゐて、
何とも奇妙な現実が蓋然性が入り込む余地なく、
確率一の割合で存在し、
つまり、それは、最早、己の逃げ場がない現実世界で、
さう認識する吾はその完全の光景を全肯定して受容するのだ。
これが睡眠時において毎日反復され、
夢魔の思ふがままに操られる吾が其処にゐる。
そして、それに吾は満足すら覚えながら、
夢魔の思ふがままに其処にゐる事を強制されてゐるのであるが、
それを強制とは全く感じる事なく、
吾は夢魔が表出させる反復の大渦巻きに呑み込まれる事を是とするのだ。
つまり、反復は創造の時間とも言へ、
夢魔が起こす反復に呑み込まれることで吾は毎回生まれ変わるのだ。
再生。
反復は畢竟、再生の異名でしかなく、
それ故に反復は心地よいのだ。
嗚呼、この時間が永劫に続くことを渇仰するのは一体誰だ。
それは、吾以外あり得るのか。
さうして、吾は大時計の振り子の前から徐に離れる事で、
吾をぶった切る快感を味はふ。
秋空に消ゆるは誰の影なりぞ
鱗雲何を捨つるか迷ひつつ唯朔風のみが胸奥に吹く