ポエム
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宇宙顛覆への果てしなき執念が燃え立つ
もとは単なる自己愛から発したとはいへ
此の宇宙への憎悪は果てを知らぬ。
油断をすると直ぐに私の周りを囲繞(いにょう)し、
さうすると私はどうしやうもなき息苦しさに襲はれ
此の宇宙から逃げ出したくなるのではあるが、
それは叶はぬ夢でしかなく、
無際限に続く此の宇宙から遁走できぬ私は
――はあはあ。
と酸素を求めて水面に口を出す金魚のように
息をすることに相成りし。
初めは此の宇宙から逃げ出したいと思ってゐたにすぎぬ其の憎悪は
次第に宇宙顛覆といふ大それた考へへと至り、
どうあっても己の存在を守衛するべくには
最早此の宇宙の顚覆しかなしとの思ひに至り
私はその手立てを執拗に考へをりし。

さて、一口に宇宙顛覆といふが、
相手はもしかすると無限をも呑み込んでゐるかもしれぬ宇宙であるので、
私がどんな権謀術数を企てたところで
高が知れてをり
此の宇宙は顔色一つ変へることなく
涼しい顔で私を嗤ってをるが
それが益益私の憎悪に火を点け
私の腸(はらわた)は煮えくり返るのである。
さうして私はまづ此の宇宙から身を隠す術を探したのであるが、
闇の中に身を置くと居心地がいいことに気が付いたのであった。
暗中模索。
この状態が辛うじて私が私でをれるぎりぎりの処で、
屹度闇には宇宙の肝が隠れてゐるのかもしれぬと思ひつつ、
私は好んで闇の中に身を置いたのであった。

私は来る日も来る日も考へに考へ抜き
どうやって此の宇宙を顛覆するのが最善かを考へた処、
――ええい。
とばかりに宇宙が青ざめる架空の書物を書き上げるのが
一番宇宙顚覆に近しいのでないかとの思ひに至り
私はそれ以来、宇宙を顛覆するのみの目的で
物語を書き連ねてゐる。
その内容は果たせる哉、存在論になり
今在る存在の有り様をひっくり返せれば
宇宙は否応なく顛覆する筈だと
そんな思ひに燃え立ってゐる。
埴谷雄高ではないが、
一生を賭けて未完の巨大作が書ければと
それだけを心の拠り所として
只管、韜晦な物語を書き綴ってゐるのだ。
それは宇宙にだけ読ませるために書かれたもので、
読者は必要なし。
それ故に韜晦な物語となってしまふが
それは致し方なしと
私は只管宇宙に向けてのみ書いてゐる。
21/11/22 04:34更新 / 積 緋露雪



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