ポエム
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私は船に乗ったことがない
それは海の中にあるという貝
かもしれないし 別の何かかもしれない

海面には光のつぶがあり、つかめそうで
つかめないというらしい

私は船に乗ったことがない
上下左右に揺れる船体では
船員たちがその日の飯にありつけず
苛立ちを隠せないらしい

いつもの鳥たちが今日は姿を見せない
というらしい

船内の蒸し暑さに
気が障る人間もあるというが
私は船に乗ったことがない

夜になると海は船体との境を曖昧にし
ひとつの固体と液体とが
混ざり合い 共鳴し合い
ひところの輝きを鈍くしていくという

潮が満ち これまでとは違う海が見える
というらしい

私は船に乗ったことがない
これまでも きっとこれからも
私は船に乗ることはないのだろう
22/08/06 20:55更新 / 四分ツメ



談話室



■作者メッセージ
感情の思うがままに。

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