辰鼓櫓のあいつ
盆地の十八番の蒸し暑さを
あいつはものともしなかったっけ
いつか来た あいつの故郷
だけど 今回は俺ひとりきり
時計台の石垣にもたれてた
赤い鳥居をいくつもくぐって
城跡の広場に登りつめれば
樹と樹の間をつたうように
笑いながら走り回ったあいつ
その姿が一瞬 虫捕り網と
麦わら帽子と真赤なミニスカート
あどけない童女をだぶらせながら
まるで あいつの生い立ちまでも
心に入れたみたいな気がして
俺も半ズボンとひざの擦り傷
蝉時雨に深く包まれながら
ふたり 腕白でお転婆になった
城下町をそっと見下ろす高台
「サラスパとちがう 皿蕎麦やがな
この地方の名物やで」
確かに都会の蕎麦と比べると
まるで歯ごたえは違うけど
あまりあいつがムキになるから
思わず口から吹いてしまって
「汚いやんか!」と怒られた
そんなこと思い返しながら
コシの強い蕎麦 ひとり噛みしめる
この時計台の下の広場で
仮装踊りが繰り広げられる頃
宵闇に包まれて そっとふたり
小学校の校庭の陰にかくれ
紺色の浴衣の袖引き寄せた
鳴り響く太鼓と盆歌
輪になって踊る街の人々
そして 寄り添ったままの俺たちを
済んだ夜空の下 ライトに映えて
時計台は静かに見守ってた
じわっとする盆地の蒸し暑さも
城跡の方から聞こえる蝉時雨も
城下町を静かに流れる川も
すべてがあの頃のままなのに
あいつはいない 俺ひとりきり
櫓造りの時計台は
黙ったまま この小さな街を
あいつの生い立ちまでもすべて
そっと見守っているだけで
あいつはものともしなかったっけ
いつか来た あいつの故郷
だけど 今回は俺ひとりきり
時計台の石垣にもたれてた
赤い鳥居をいくつもくぐって
城跡の広場に登りつめれば
樹と樹の間をつたうように
笑いながら走り回ったあいつ
その姿が一瞬 虫捕り網と
麦わら帽子と真赤なミニスカート
あどけない童女をだぶらせながら
まるで あいつの生い立ちまでも
心に入れたみたいな気がして
俺も半ズボンとひざの擦り傷
蝉時雨に深く包まれながら
ふたり 腕白でお転婆になった
城下町をそっと見下ろす高台
「サラスパとちがう 皿蕎麦やがな
この地方の名物やで」
確かに都会の蕎麦と比べると
まるで歯ごたえは違うけど
あまりあいつがムキになるから
思わず口から吹いてしまって
「汚いやんか!」と怒られた
そんなこと思い返しながら
コシの強い蕎麦 ひとり噛みしめる
この時計台の下の広場で
仮装踊りが繰り広げられる頃
宵闇に包まれて そっとふたり
小学校の校庭の陰にかくれ
紺色の浴衣の袖引き寄せた
鳴り響く太鼓と盆歌
輪になって踊る街の人々
そして 寄り添ったままの俺たちを
済んだ夜空の下 ライトに映えて
時計台は静かに見守ってた
じわっとする盆地の蒸し暑さも
城跡の方から聞こえる蝉時雨も
城下町を静かに流れる川も
すべてがあの頃のままなのに
あいつはいない 俺ひとりきり
櫓造りの時計台は
黙ったまま この小さな街を
あいつの生い立ちまでもすべて
そっと見守っているだけで
26/01/25 15:40更新 / 春原 圭