ポエム
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旅の手帖
浅間おろしを背に浴びながら
千曲の川面を見下ろしたたずむ
ひんやりとした高原の城跡
遅い桜もそろそろ終わる頃

 蜃気楼にはついにめぐり逢えず
 2時間分の日焼けの痕残し
 くるりと港に背を向ければ
 立山の頂はまだ白く

いくつもの小島をめぐる船に
餌を求めて群れるカモメたち
霧雨にけむる海の上で
芭蕉も絶句したのだという

 連絡船はもうここから出ない
 北の果ての港も今は静か
 この束の間の夏のひととき
 そっとかみしめているみたいに

夕陽に染まったセピアの海に
島行きの定期船が漕ぎ出す
高台にある境内からは
人たちの表情は見えない

 宿場町はすべて山の中
 番傘さして歩く小径
 気がつくと雨はすでに止んで
 御嶽に大きく虹の橋

テレビドラマで観たようには
ロマンチックなものじゃないさ
人里遠く離れた丸太小屋
ここからはラベンダーも見えない

 あいにくの曇天模様のために
 今日は利尻も礼文も見えない
 岬より水平線をのぞみ
 まだ見ぬ異国をひとり思う

この長い長い架け橋が
向こうとこっちを結んでいる
立ち並ぶ臨海工業地帯
列車はまっしぐらに目指してる

 なぜだかいつも雨にたたられる
 百万石の街を濡らしながら
 卯辰山を霧にけむらせながら
 足早に去った大名屋敷

つわものどもが夢の跡に
生い茂ったという草たちが
まだ残っててホッとひと安心
ここは都市化なんてしないでくれよ

 旅の手帖を読み返しながら
 向かいの席に足を投げ出して
 のんびり行こうぜ鈍行列車
 青春キップが続く限り
25/12/20 09:56更新 / 春原 圭

■作者メッセージ
並行在来線があちこち第三セクターに移管されて、ここに書いた中にも青春18キップで行けなくなった街がいくつか…。

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