開戦記念日
昭和二十年八月十五日
俺たちの戦争は この日から始まった
赤紙など必要ない
ここが俺たちの戦場だった
誰に課せられた義務でもない
俺たちは必然的に戦士となった
誰のための戦いでもない
ただ生き延びるためだった
戦争責任者は言った
タエガタキヲタエ
シノビガタキヲシノビ
誰もがみんな敵だった
自分で自分を守るしかなかった
俺たちの連隊は 進攻した
農家に忍び込み 大根を盗んだ
仲間がひとり つかまって殺された
犬を殴り殺して その肉を喰った
仲間がまたひとり 戦死した
ヤミ市へも攻め込んだ
仲間がひとり ヤクザにつかまり戦死
もうひとり 警察の捕虜となった
戦友はひとりずつ減ってゆく
負ける戦いはするな だなんて
ここでは通用しなかった
負けるその日を延期する
ただそれだけの戦いだった
俺たちの玉砕は時間の問題だった
もはや戦後ではない という言葉が
俺たちの玉音放送だった
何とか玉砕はまぬがれたが
俺たちはどうやら負けたらしい
勝った連中は 金に物を言わせ
今も政財界を牛耳ってるやつら
今も俺たちを苦しめてるやつら
だが 俺たちは成すすべもない
宙をさまよう慟哭の叫び…
そして 歳月は流れた
こんな戦争のことなんて
知る由もなさそうな顔たち
戦友たちの顔が
ひとりずつ浮かんで消える
日本は平和だ…
また 八月十五日がやってくる
俺たちの開戦記念日だ
正午のサイレンを合図に
そっと 黙祷を捧げよう…
俺たちの戦争は この日から始まった
赤紙など必要ない
ここが俺たちの戦場だった
誰に課せられた義務でもない
俺たちは必然的に戦士となった
誰のための戦いでもない
ただ生き延びるためだった
戦争責任者は言った
タエガタキヲタエ
シノビガタキヲシノビ
誰もがみんな敵だった
自分で自分を守るしかなかった
俺たちの連隊は 進攻した
農家に忍び込み 大根を盗んだ
仲間がひとり つかまって殺された
犬を殴り殺して その肉を喰った
仲間がまたひとり 戦死した
ヤミ市へも攻め込んだ
仲間がひとり ヤクザにつかまり戦死
もうひとり 警察の捕虜となった
戦友はひとりずつ減ってゆく
負ける戦いはするな だなんて
ここでは通用しなかった
負けるその日を延期する
ただそれだけの戦いだった
俺たちの玉砕は時間の問題だった
もはや戦後ではない という言葉が
俺たちの玉音放送だった
何とか玉砕はまぬがれたが
俺たちはどうやら負けたらしい
勝った連中は 金に物を言わせ
今も政財界を牛耳ってるやつら
今も俺たちを苦しめてるやつら
だが 俺たちは成すすべもない
宙をさまよう慟哭の叫び…
そして 歳月は流れた
こんな戦争のことなんて
知る由もなさそうな顔たち
戦友たちの顔が
ひとりずつ浮かんで消える
日本は平和だ…
また 八月十五日がやってくる
俺たちの開戦記念日だ
正午のサイレンを合図に
そっと 黙祷を捧げよう…
25/08/22 19:18更新 / 春原 圭