ポエム
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二百十日
あれほどにきらめいてた夏も
今はもうかげりを見せ始め
秋がやってくるその前に
北上してくる台風がひとつ

 あちこち傷だらけになって
 よじ登った大きな木
 「あぶないよー」ってキミが泣き出して
 あぶらぜみが逃げちゃった
 空っぽの虫かごぶら下げて
 キミはまだヒクヒクしながら
 帰り道 トボトボと僕についてきてたね

積み重なったワークブック
ねじりはちまきの西陽の部屋
「あっきれたー」って笑ってるキミに
泣きべそかいてSOS
全部片付いた時は 思わず
「やったね!」って飛びはねたっけ

 地獄のノックから解き放たれて
 泥まみれのユニホームを着替える
 いつも部室の前で待ってた
 キミのその手にはテニスラケット
 いつか登った大きな木の下
 木もれ陽の中にいたキミが
 なぜだか僕には切なくて

「待っていたよ」とキミを迎えて
同じこのホームに立って
「元気でね」とキミを見送る
やがて列車が動き出した
走って追いかけてみたけど
キミの笑顔は遠くなるばかり

 あれほどにきらめいてた夏も
 今はもうかげりを見せ始め
 北上してくる台風がひとつ
 秋の訪れが静かとは限らない
23/09/27 08:08更新 / 春原 圭



談話室



■作者メッセージ
キミが街に帰って秋が近づいても、今も僕の心は終わらない夏休み…、なんて、ね。

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