おまえに話してもわかるまいが
あの頃の俺たちは輝いてた
楽しいばかりじゃなかったけれど
くじけたこともあったけど
俺たちはそのたびみんな
力を合わせて励まし合った
時には殴り合ったこともあった
けれども憎しみなんてなかった
俺たちは俺たちのため
俺たちの証を作り上げてた
力を合わせて作り上げてた

　おまえは一笑に付すだろうが
　こいつがあの頃の証さ
　こんなちっぽけなものだけど
　いくつもの限りないきらめきが
　中にいっぱい詰まってるのさ
　だけど見せるつもりなんてないよ
　そんなことしても意味ないからね
　あの頃の俺たちのきらめきは
　あの頃の俺たちしか知らない
　だからこいつは引き出しの奥
　しまい込んだままにしてあるのさ

おまえには信じられないだろうが
俺はいいかげん疲れてるんだ
引き出しの中を見せないままで
おまえに付き合い続けてるけど
俺はカメレオンじゃないんだ
まわりのやつらと同じ色に
コロコロ変わるなんてできないさ
そろそろ限界にきてるぜ
過労でぶっ倒れないうちに
俺は辞表を出すことにするよ
どうか受理してくれたまえ

　おまえは認めやしないだろうが
　これは希望退職だからね
　自分から解雇しただなんて
　誤解しないでくれたまえよ
　引き出しの中身と同じ物を
　俺はおまえに求めてたんだ
　それがないとわかった以上
　もはやおまえに用はないのさ
　まあ　何を言ってもムダだろう
　ブツブツ言うのもくたびれた
　俺ももう　口を閉ざすさ

■作者メッセージ
こうして誰もが無口になってゆく…