ポエム
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行き詰まりのアトリエ
パレットナイフを握りしめ
描きかけの絵に思い切り振り下ろした
バリッ!
キャンバスを斜交いに横切った大きな亀裂が
俺の才能のなさを嘲笑う

 たまらなくなってキャンバスを
 壁に思い切り投げつけた
 ベキッ!
 無残に崩れた骨組みが
 俺の行く末を暗示する

思いあぐねて 絵の具のチューブを
一色残らず叩き潰した
ベチャッ!
十数色で合成された鈍色が
俺の心をそのまま表している

 どうしてもうまく表現できない
 自分というものをうまく出せない
 今の自分を 喜びを 悲しみを
 痛みを 楽しさを
 俺の心のキャンバスに描かれたあの名画を
 現実のキャンバスにそのまま描くことが
 どうしてもできない

俺はこのまま終わってしまうのか
鈍色の心に大きな傷を負ったままで
無残に屍を晒すのか
そんな… そんな…

 時はいつしか黄昏に変わり
 キャンバスの乗っていないイーゼルだけが
 暗いアトリエで俺をじっと見守っていた
25/01/06 16:38更新 / 春原 圭



談話室

■作者メッセージ
パレットナイフじゃキャンバスを切り裂けんやろ、ってツッコミは無しでよろしくw

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