ポエム
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吾輩は教師になりたかった
ひんやりとした空気の路地口
朝露に濡れた干し草の山
軒先でくるまった野良猫が
耳のうしろのあたりに手を伸ばす
昇り始めた陽の光の中
新しい一日の始まりを
味わうにやぶさかではないけど

 吾輩は教師になりたかった
 キミたちと朝を迎えたかった
 吾輩は教師になりたかった
 試験にスッパリ落ちてしまった

高台へ向かう坂の途中で
キミたちと何人もすれ違う
楽しそうな談笑を横目に
足早に駅へと向かっている
時間通りについた電車には
いつも通りの顔ぶれが並ぶ
流れ行く街並みもまた同じ

 吾輩は教師になりたかった
 樹々に囲まれた高台の上
 吾輩は教師になりたかった
 単位を取りそこなってしまった

スクランブル交差点はまるで
7番を3つ並べたように
これでもかと人波があふれて
そびえ立つ鏡張りの建物
どんよりとした鈍色映した
無機質な直方体の並び
ひとり またひとり吸い込まれてく

 吾輩は教師になりたかった
 澄んだ瞳のキミたちが好きだった
 吾輩は教師になりたかった
 違う道を今 走ってるんだ

やわらかな光をはね返して
さわやかな空気をはね返して
茜色が藤色と化すまで
空調と蛍光灯の世界
サッカーボールを追いかけていた
遠い季節をふと思い返し
重いため息をひとつもらした

 吾輩は教師になりたかった
 宵闇にかすむサッカーボール
 吾輩は教師になりたかった
 ついつい忘れそうなことだけど

吾輩は教師になりたかった
キミたちを守っていきたかった
吾輩は教師になりたかった
今はもう 遠い昔の話
24/10/19 19:58更新 / 春原 圭



談話室



■作者メッセージ
でも、もしなってたら、モンスターペアレントとぶつかって精神を疲弊させてた気がする…。

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