師 嘆きて曰く
我 志學にして黌室にあり
比來 春情を覺ること莫莫たる
或る時 我等講學し
師 乃ち大いに嘆きて曰く
「『戀』と言ふ文字 古には
糸し糸しと言ふ心と書く
其れ當に戀なるべし
然るに今 『戀』を『恋』と書く
汝を好く 併し此の人も亦た好く
何れも亦たの心なり哉」と
我 師の言を宜とせずも
若輩にして辯ずるを得ず
然れども我 人を好くこと幾度
『戀』なるか 或いは『恋』なるか
未だ自づから識る能はず
比來 春情を覺ること莫莫たる
或る時 我等講學し
師 乃ち大いに嘆きて曰く
「『戀』と言ふ文字 古には
糸し糸しと言ふ心と書く
其れ當に戀なるべし
然るに今 『戀』を『恋』と書く
汝を好く 併し此の人も亦た好く
何れも亦たの心なり哉」と
我 師の言を宜とせずも
若輩にして辯ずるを得ず
然れども我 人を好くこと幾度
『戀』なるか 或いは『恋』なるか
未だ自づから識る能はず