ポエム
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草野球をさせてよ
びっしり生えた雑草たち
片隅に積まれた土管の山
茶色に錆びた有刺鉄線
立入禁止の大きな看板
僕たちバットとグローブ抱えて
残念そうに眺めてたよ

 いずれマンションが建つ一角
 早々に工事に入る模様
 けど それまでほんの少しでも
 遊んだまま置かれてる一角
 中に入ったからって一体
 何が困るっていうのだろう

僕たちに草野球をさせてよ
照明もスコアボードも要らない
場所さえあればそれでいいから
たったこれだけの小さな願い

 ホームランが遠くに飛び過ぎて
 向こうの家のガラスを割った
 こわいおじさんが青筋立てて
 「コラッ!」って怒鳴りながら出てくる
 僕たち一目散に逃げ出して
 またボールが一個なくなった

ヘッドスライディングの甲斐あって
勝利のランニングホームラン
シャツは思いっきり泥だらけで
肘は見事にビリッと裂けた
ガッツポーズはいいけれど
帰ったらまたママのカミナリが

 僕たちに草野球をさせてよ
 マンガなんかじゃよくある世界
 子供みたいに子供をやりたい
 たったこれだけの小さな願い

月・水・金は学習塾で
火・木はピアノのおけいこ
広い空地を横目に見ながら
黙って通り過ぎてく僕たち
だあれもいないその空間が
陽だまりの中 ぽっかりと

 右手に持ったバッグの中には
 グローブとバットの代わりに
 テキストとノートと筆入れと
 そういえば マンションの工事
 おとといから始まったみたいだね
 もう関係ないことだけど

僕たちに草野球をさせてよ
やっと学校が終わった時間
僕たち仲間に共有させてよ
たったこれだけの小さな願い

 僕たちに草野球をさせてよ
 頼むから草野球をさせてよ…
23/09/09 20:17更新 / 春原 圭



談話室



■作者メッセージ
のび太くんやカツオくんのような子供時代を送った世代って、何歳以上だろうか…

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