ポエム
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夕差す窓際
大きくて閑静な図書館の一角
昔読んだ本の続巻を手に取り
左耳にイヤホンをつけてから
半個室の席にゆったりと座る

特に音楽を聴くわけではない
周りが五月蝿いわけでもない
ただその方が落ち着けるだけ
安心するための下準備なだけ

午後四時ちょうどに一人きり
その日の予定をすべて忘れて
目の前の読みたい本を楽しむ
図書館に来れば誰でもできる

けれども限りなく贅沢な時間

閉め切られたカーテンの隙間
少し雲が浮く青空が顔を出す
その下は住宅街の屋根たちが
沈みだした日の光を橙に映す

今は秋だし、朝方でもないし
山は見えない人工の景色でも
紫立ちたる雲の
   細くたなびきたる──
私の瞳は今、この一時間だけ
清少納言の瞳を預かっている
25/10/23 16:09更新 / しゃぼん玉

■作者メッセージ
たまにありますよね
詩とか小説とか古典の一節を
ふと思い出す瞬間が

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