ポエム
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日も高ければ
犬が一匹落ちていた
黒い大ぶりの雑種犬だった
堀の下をうろうろと歩き回っている
堀はそこまで深くはみえないが
どうやら足をくじいたらしい
上り口をもとめて右往左往している
くじけた足ではうまく跳びあがれはしない
動くたび足元の水がぱしゃぱしゃとはねた
落ちた拍子に頭も打ちつけたのだろう
あわれな黒犬はふらふらとよろめいて
壁に何度も頭をぶつけた
首に首輪もしていないから
飼い犬か野良犬かも判別がつかない
私は見かねて堀の下へと降りていった
噛まれはしないかと慎重に近づく
犬はまったくおとなしかった
持ち上げようとすると思わぬ重さに驚いた
なんとか上へあげると
犬はほっとしたような顔も見せたが
その後もうろうろは止まらなかった
後ろ足をちょんちょんと引きずって何度も周った

この犬のように私もなすすべなく歩き回ったときがあった
たとえ足も頭も異常はなかったにせよ
たぶん頭は少しくおかしかったが
無力さの下でもがいていた
私はもう疲れた
今後も堀の下の私はせいぜい歩き回るだろう
どうせこれが自由だ
犬に何もできなかったのだ
人の身にだって何ができる
24/01/09 21:11更新 / あののの



談話室



■作者メッセージ
暗さがすぎるかもしれない

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