ポエム
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輝く水色のリボンを、夜空に


薄緑のアオバハゴロモが、いつの間にか左端にいた。肌色の長椅子に座って、昼下がりの風に吹かれているところだった。飛んで行きそうで飛んで行かない。それだけのことがなんだか健気で、この木の椅子が気に入ったのかなと思うと、そこから微笑ましい想像が広がっていって私は、生態なんて無視して、この子はお父さんハゴロモとお母さんハゴロモと一緒に住んでるんだと思った。

やさしいやさしいお父さんでしょうだって、たとえばいかついアオバハゴロモなんて想像できないもの(!)でも色違いなら想像できるなと、私はお父さんハゴロモを青で、お母さんハゴロモを黄で彩色していた青は、マリンブルーの青、黄は黄砂の黄、白のドレスをごくゆるやかに押し上げる胸、それはお城から遠くオアシスを望む王族の娘、手すりをギュッと握る両の手のひらがか弱いのは、後に黄ハゴロモに生まれ変わる定めだから。

冷たい黄砂が辛いよね。白く美しい手が荒れちゃうよね。お星さまがキラキラする黒い海に、あなたは何を架けてみたい?私はあなたのために、輝く水色のリボンを架けてあげたいな。大地をなぞるようにゆるりと弧を描くリボンを。

そのリボンはあなたの心の色だと、私は思ったの。でもあなたは、ただ静かに機を織るよに過ごしているのが見えたから、私はあなたを夢の方角へと折り返してあげたかったの。

あなたは目を瞑った。私も目を瞑った。だけども黒い海に煌めくお星さまは心なしか冷たい。このいまもどこかのささやかなお寺では雨が、しっとりとやさしい雨が、降っているのだろうにと、私は焦げ茶の柱の匂いすら思っていて。あなたはそこで雨宿りする女(ひと)でだってあり得たのだ。

ねぇこの世界には、こんなにも温かい大地があるんだよ。あなたは厳しい世界で、さぞかし辛いだろうな。だけどその、凛とした瞳が、ちょっとだけ羨ましかったり、するんだよ?





25/06/19 21:23更新 / はちみつ



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