あなたの胸の織り成す波
輝ける青に抱かれたあの町で
あなたは今、どうされていますか?
あなたに行きつけの花屋があったらと思います
あなたがあなたの辿ってきた
幾千もの孤高の黎明を乗り越えていけるように
それは老婦人の静かな愛に満ちた花屋だ
その朝はほんのりと霧に覆われていて
それがあなたを
あの亜麻色の瞳を儚げに見せる
恋に悩める乙女のような
そんな流し目を受けたように老婦人は感じて
"いまのお姉さんには、この花がいい気がするねぇ"と言う
小さな水色の花が揺れると
切なる淡さが蝶のように
あなたの胸をゆるやかに巡る
あなたは遠い春の桜吹雪を想うでしょうか?
濡れそぼつ桜の木から静かに落ちる雫を
指の腹で抱きとめ続けるようなあなたが
僕はずっと見たかったんです
あの日々のあなたはまるで
海から拒まれた砂漠で目を伏せているようでした
いつも何か、張りつめた頬をしていた
止むことのない砂風に吹かれ続けているようで
白い衣服の折りなんかには
あなたの胸の織り成す波の
そのやわらかなやさしさに泣きそうでした
あなたは花を胸にしかと抱いて
霧の街路を行くでしょうか
胸にその水彩をそっと描いて
丸眼鏡の老婦人に手を振るでしょうか
夜になれば
あなたはやはり一人になる
あらためてあなたの
亜麻色を想う
秋に焦がれる雫のように
胸の湖面にそっと触れる
どうかそんなあなたでいてほしい
僕は夢見ています
いつかの朝に薄紫のシャツなんか着て
やさしいウインクを夏風に乗せて
朝日に煌めく星にしてしまうような
しっとりとしながら逞しい
そんなあなたを