ありったけの儚げな女(ひと)に
建設現場の足組の銀柱に
淡雪がささやかに舞い降りる
厚手の作業着のお兄さんはわたしより10近く上だろか
のっぺりとした日常がループしているようでそのじつ
わたしは大人への階段を緩やかにもたしかに昇っている
建設現場から遠ざかるといつもの仄暗い住宅路になって
日々のありふれたあれこれを感じようとしてたものの
どうしてだか執拗に
体育の授業のバスケの練習風景がリフレインしてきた
遠く離れた場所からボールが魔法のように吸い込まれていく
そんな立木くんとは対照的にわたしのボールはガッ!ガッ!ガッ!
それが何気ないようでたしかな
明日の不安要素の象徴のようで
わたしはきっと人生を上手くやっていけないだろう
なんてことじゃなくって
むしろそれなりに上手くやれるよな気さえしてるんだけど
にもかかわらず小さな諸々のトラブルたちがつねに影のようにあり続けるだろうっていう
そのことへの言いようのない
倦怠じみた諦念のようなものを感じちゃったんだ
それでもわたしは風光学園に行く(!)
っていうのはもちろんダジャレでもある
わたしはただ、
ゆるやかな風と光と、
そして愛につつまれたさなかを凛、と、
決して剣を抜くことのない女騎士のようにやさしくも厳かにあゆみたいだけ
叶うことなら少しでも多くの
風を光を、
愛を気高さを、
かき集めるよに生きてみたい
まずは再来年の校舎の桜吹雪の下で
ありったけの儚げな女(ひと)になれるように
待ってろ、未来!