青紫のブルーベリーはいかが?
サンサン太陽の下で育った
青紫のブルーベリーをボウルにいっぱい
彼が取ってきたのを受けて
ササッと小皿に盛り付ける彼女も上機嫌
"市場に行く手間が省けたのぅ"と皺の深いおばあちゃん
"こんな朝にはお出かけしてもよかったんですが"と愛想よく
"嘘ゆうなあいいっつも、お日さんに怯えとるみたいに傘にこんもり丸まっとるくせに"
何も言えないままに苦笑い
ややあって
"お義母さんもお食べになってください"とはにかむように
"食べやんと思った!?"と怒号のように飛んでくる
"えっ?えっ?あっ、そういうわけじゃ、ごめんなさい…"と萎れた花のよになって
高校の折り、彼女は華道部だった
そしてクラスの男子に人気があった
部の旅行で行った古都の片隅の茶室
円窓の向こう側との夢のような隔たりは
ある放課後いかつい男子に左肩に腕を回され
やはり苦笑いしながらやり過ごした
家に帰って自室に戻ると誇りが太陽のよに燃えた
夜が更けるにつれそれは朝日のように澄んでいった
外に出て畑に行くと当たり前だが彼がいた
一つ、また一つと小さな青紫の果実は彼の手へと吸い込まれていく
"あれから、こうして時(とき)は流れたのね"と彼女は言う
"どうしたんだい?"と彼はもちろん(?)どこか怪訝に
2人授業を抜け出したあの朝の屋上であなたは
そう遠くもなさげなプロペラ機へとピースサインをしきりに送った
あなたはささやかな私たちの明日へと挨拶をしてたんだわと彼女は言う
"今日は朝から文学少女モードかい?"と彼が笑う
そうして2人は手を繋いで帰ったのだった
枯れかけたアジサイ
それでもずっと
母のようではいたいと