橙の風
とにかく風の、風の吹いてることをありがたく思う。
昨日の夕刻わたしは萎れたように一人だった。遥か左斜めから射すオレンジに、"恥ずかしいから止めて"と胸にごちた。
朝はいいな。ただそこにいるだけでいいんだよって、抜けるような水色から舞い降りるテノール。
不思議だよわたし、どうも早朝の空とだけ相性がいいみたい。ちょっぴり間延びしたような昼。物哀しく胸に入り込んでくるような斜めの陽。昼には胸が泡立ってきて、夕刻には胸はすっかり掻き乱されて明日を、もうちょっと力抜きなよって諭されるほどに胸をシャン、って伸ばしてさ、ただひたむきに睨んでたんだ。
いつだって誰かの背を追いながら生きてきた気がする。(こんなんじゃ)「全然、ダメっ!」って自分で自分を叱っては、もったいぶって立ち直るまでのイメージビデオを折に触れては演じてた。色は移ろえど見つめ続けてくれる空に、甘えていた。
海に行って、遥か海洋をゆく一艘の舟を見つめてみたいなぁ。
わたしの魂は舟の上へと漂っていって、夜には満天の星をベッドに、凛々しさ120%の夢を、見るんだ。
ひたむきに、ではなくて、ただただ何か大切な使命を果たすように生きれたらなぁ、なんて思うのです。
凛っ、とほのかに赤みがかったこの頬に、氷のような純心だけ添えて、
胸にはただほんのりとした、切なくも爽やかなやさしさを灯して、すれ違う人にただそっと、薄いうすい、橙の風を送りたいのです。