幾百夜
なんだか可笑しい
もしかしたら叶わない方が幸せなのかも、なんて
なんら始まってもいない今から思ってしまっているなんて
ひっそりと儚い希望へと向かって夜を行く、君は
そんな自分が好きなだけなんじゃないのかい―
なんて言われたとして
無理に反論しようとも思わない
ただ、胸の広い空間の果てに彼女がいて
そしてその距離を測り続ける僕がいる
ただその事実を抱いて歩いていけるというそのことが
この世界にもたらされた夢のような奇跡だと感じる
たぶん僕は、彼女が
ひとえに心の幻像のようなものなのだと知っている
でも、とまた思う
もしかしたら彼女は、ほんとうに
"彼女"に限りなく近い存在であるのかもしれない
それはこの今、端的に分からない
一言でいえば
空想と現実の擦り合わせ
それが諸々の制約によって
限りなく緩やかにしか可能にならないだろうことを
しかし逆にうれしく思う
喩えるなら
4時間近い映画の上映を前に
まったりとポップコーンに舌鼓を打つ観客の気分
お味はもちろん(?)
甘く濃厚なキャラメリゼ(!)
星形の
砂糖の結晶たちの色合いを
ゆるりと仔細に見比べるように
幾百もの夜を過ごしていこうか