理知的な側面
異国の花のように、君は僕の胸を打つ。日本人のようでちょっと違う、より丸みを帯びた、南国のニュアンス。17も下の君は、仕事の遅い僕に姉のように接してくれる。それでいて2人、向かい合い静かに作業している折りなんかには"○○さん"と、僕の下の名前を親しげに呼んでは、健気な上目遣いでささやくように語りかけてくる。妹のように。
姉のようで、妹のようで、僕はなんだかクラクラして。あたかも淡い夢のなかを、揺蕩ってるみたいさ。
でも君はあくまで大人びた女性であることを、僕は知っている。同じく20代前半の女の子たちとはほどほどに、君は30代前半の逞しい男とこそ語らい合っているよね。意味は分からないながら、その利発な快活さでもって男を刺激するような駆け引きは、僕の胸をざわつかせる。そのとき君は軽やかながらもたしかに、「女」になっているようだから。
ああ僕にも、君の国の言葉が話せたならっ!涼しげな顔をしたままで、君の腰に手を回して胸を張りたい。そうして君の国にはないだろうイチョウ並木の下なんかを、そっと目配せするように歩きながら、僕の理知的な側面をめいっぱい君の胸に注ぎたい。
君のやさしくもどこかせつない南国の顔を見ていると、そんな妄想が止まらなくなるんだ。