ポエム
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女性

人として弱い星の下に生まれた
もう38だけれど
前の職場では21の男の子に道を譲っていた
けれどそこから工夫があり
僕は譲っても譲っても
作業の速い彼に顎で使われても
けっして「~くん」という呼び方を崩さなかった
そのほんのりと包むようなトーンも崩さなかった
ある日ロッカーで着替えていると彼が
「明日も寒くなりそうですね」と言ってきた
タメ口は敬語に変わっていて
その笑顔は可愛い後輩を演じていた
「通勤の折りはホント気いつけてよ
 何かあってからでは遅いからね」
そう僕は言った
「はい、気をつけます」だったか
「はい、ホントに」だったかは忘れたけれど
その笑顔は可愛いらしいままだった

その日から僕は彼を組み敷いたとか
そんなことを言いたいのではない
事態はむしろ逆で
結局そのとききりで元に戻ったかのようだった
相変わらず彼は道を譲ってくれなかったし
年下の人間に対するように僕に接してきた
けれどその日以来
顎で使われることはなくなった

社会で生きて人と関わる限りは
王様でもないかぎり
組み敷かれることは避けられない
対等、上、下
単純計算なら三分の一
でも下は下でもその度合いには
無数のグラデーションがある 
立場を逆転なんてそうできないけれど
自分の力で少しでも対等に近づけたなら
そこには無上の悦びが生まれる
ちょっとでも自分をたくましく見せるために
明日も僕は自分を飾る
男っぽくは振る舞えないから
余裕ある大人の女性をお手本にして


25/01/05 17:24更新 / はちみつ



談話室

■作者メッセージ
女性的でありたい。惹かれていた50代のパートさんが去年いっぱいで辞めた。あんな落ち着いたしとやかな人になれたならなと思っていた女(ひと)。綺麗だったひと(笑)

あの人もいい、この人も素敵だな…そんな風に、色んな女(ひと)をロールモデルとして胸に抱いて、雰囲気を形作っていきたい。中性的なポイントで止める必要があり、そのバランスがけっこう難しいのだけど。

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