ポエム
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彼女へと翔ける―大人な愛
狂おしく我が物にしたいとか
彼女といると世界が輝くとか
そりゃあ
そんな情を描く方がドラマ映えするだろう

彼女といるとひとえに優しくなれる
彼女の心の在り方をどこまでも尊重したい
この世界には一体いくつのそんな
ピアニッシモのように静謐な愛があることだろう

胸の空洞を埋めるようにもたれ合うんじゃなく
ただ愛を分かち合いたくて身を寄せ合う

それは自立した者同士の温もりの共有で
胸が乾いた折にはむしろ彼は1人になる
彼は衣服を正すようにして胸を正して
彼女にふさわしい人となって再会する

甘えや弱み、心の傷―
それらが表出される折には2人は
実にエレガントな笑いにまぶして語る

2人はなんだって話し笑い合うのに
2人は互いを誰よりも敬い合っているようでもある

彼女と別れ1人になる夜に
彼はしんみりと物思いにふける
彼女という人はまぎれもなく
この世界にしかと存在している―

しかし彼女はまた
この僕からどこまでも遠い
彼女は僕から独立して在る、さながら
一個の美しい惑星のように

それは愛すべき遠さだ
遠いということこそが
愛すべきことなのだとこの今思える 

それだからこそ僕はあの
笑顔に吸い込まれながらその距離を
彼女へと翔けることができるんだから

23/10/19 20:26更新 / はちみつ



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