ポエム
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海の記憶
水面が輝いている
まるで月が海にキスをしているかのように

お酒を飲んだわけでもないのにわたしはどこかふらふらしている
まるであの光に吸い込まれていくようで

あの夜あなたはわたしにキスをした
初めて女を見たかのように何十回と、執拗に

あなたはわたしの中に溺れていた
わたしのすべてに浸るかのように、もがいていた

けれどいまはわたしこそがもがいている
あなたの記憶と感触を手繰り寄せようと、必死に

この海の懐に抱かれながら
わたしの心はどうしようもなく乾いている

燦然とした太陽の国
向こう側の大陸の砂漠の国で
あなたはやはりあの"海の記憶"を忘れてしまっているのかしら?

いまやこの手を伸ばすほどに
海はあなたをどこまでも隔てている
22/01/23 07:10更新 / 桜庭雪



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