ポエム
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遥かなる月日への旅
昼休み、昼ご飯を手短に済ませると、僕はすぐに作業場に戻って1人作業(仕事)をするのが最近の常だ。

その日作業場に戻ると、クーラーががんがんに効いている作業場は20℃くらいになっていて、僕はまるで入った瞬間に深い秋になったかのような、そんな錯覚をおぼえた。

時計の前に立って肌寒さを改めて味わっていると、同僚たちの笑い声が遠く聞こえてきた。僕は1人だった。心地よい孤独のうちに、1人だった。

そうか、と、ふとした拍子に僕は感じた―僕はこれから遥かなる月日へと旅をしに行くのだ、と。

秋が迎えに来る。冬が厳めしく待っている。その道への途上、1日たりとも無駄な日などなくい―と、地味ながらもしとやかな絨毯のように敷き詰められている日々を想った。

気がつけば、胸の前で手を組み祈っていた。厳かな純白の雪、その情景へと向かって歩いていける悦びで身体が火照ってくるようだった。僕は水面のように静謐な心境でいながら、しかし炎のように熱い眼差しで、ただ静かに部品の検査を始めていた。
21/09/23 19:42更新 / 桜庭雪



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