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職場で信頼されていない話
敬意をもたれたいっていう思いが最近強い気がする。言い換えれば、人からの評価を気にしている。

僕は職場で信頼を得ることができていない。スピードは割とあるけれど、正確性はないと認識されている。僕は金属端子の目視検査をする部署にいるのだけど、"端子2個分ずれていたら不良"という基準の、その2個分がどのくらいかを、どれだけ検査を繰り返しても覚えることができない。だから僕はけして2次検査(最終検査)を任されることなく、2個分未満でもじゃんじゃん弾いて、結果として大量の不良を出す1次検査員という、そのポジションから離れることができないでいる。しかも、それでもときおり不良を見落としてしまうのだ。

先日朝礼で、女課長は語気強く言った。○○の1次検査では、ホント情けない話ですけど、毎日のように不良の見落としがあります。2次検査はないものと思って、1次検査したものがそのまま納品先に行くものと思って作業をしてください。いいですかっ!?

それ以来、僕は自分が情けなくって仕方がない。惨めで仕方がない。僕はこの先なり得たとしても、"まず不良の見落としはしない1次検査員"でしかないのだ。その事実について、できることを一所懸命やって、やったなりの自分なりの達成ができれば、それはとても素晴らしいことだ―そう素直に思うことができないでいる。そして今の部署に、職場にいる限り、自嘲の感情から逃れることはできないだろう。といって、もし他の部署に移らせてもらうことがあるとしても、他の部署の作業は単調にすぎ、といって僕はリーダーシップを取るようなこともできはしない。結局、今の職場にいる限り、自嘲の感情から逃れることはできないのだろう(もちろん、じゃあ他の職場に移れば信頼を得ることができるかといえば、そうとは限らないはずだ)。

僕はもう35歳。健気にがんばっている自分を愛らしく思って、それで良しとするには、少し年を取りすぎたのだろう。

僕はゆっくりと前を向く。絶対に見落とさない―ただそれだけを考えて、一心不乱に仕事をしよう。僕にできるのは、それだけだ。
21/09/05 13:45更新 / 桜庭雪



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