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彼女は40を過ぎているけれど
彼女は40を過ぎているけれど、接する人に少女みたいな単純さを感じさせる人だ。彼女は他の女性のように表情が豊かではない。彼女はいつも能面のようだ。クールと言えば聞こえはいいけれど、僕は彼女がその実、かっこつけるということさえ知らないことを見ぬいているつもりだ。端的に言えば、大人なら有しているはずの諸々の陰影に富んだ感情というものを、彼女は知らないのだと思う。

使命感や責任感というものだってそうだ。なにか責任ある役職に就いている彼女の姿を、僕は想像することができない。

彼女はそれ以外に行動の選択肢がないかのように、いつも仲の良い友人にくっつくようにして動いている。話の大部分を、日々に起きたあれこれや人のうわさ話に費やしている。彼女は少しでも抽象的なことになると、わけわからんしと言う。

けれど彼女の身のこなしは大人そのものだ。とくにセクシーというわけじゃないけれど艶がある。その裏のない冷ややかな雰囲気が、少年のような凹凸のないスタイルにこのうえなく合っている。一言でいって、彼女は魅力的だ。



魅力というものにはさまざまなタイプがあるということを、彼女は僕に教えてくれる。大げさでなく、人は生きているだけで輝いているということも。

21/08/23 19:21更新 / 桜庭雪



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