呆れるくらいに情感豊かに
書斎からほのかな夕焼けを見ていた。青空に、そっと優しく絵の具を伸ばしたような赤みを。今日も長い1日だったなと振り返っているうちに、朝に始まった果てしない旅をいまようやくにして終えた―そんな思いが溢れてきて、胸をじんとさせた。僕たちは1日という旅路を共にする同胞なのだという思いは、胸のなか、郷里で日々を過ごしている彼女を一瞬にして、魔法のように自分に近づけた。朝の澄んだ大気のなかの、研ぎ澄まされたような頬。そしてこの旅の終わりの今には、やはり和やかにくつろいでいるだろう彼女の、夕暮れを見つめるどこかもの悲しくもある瞳・・・。呆れるくらいに情感豊かに、世界は回っている。