パイをわたしが譲ることになろうとも
船着き場からゆっくりと、船が水を分けて離れていく。それは商船で、騎士である私には関係はないのだけど、わたしは胸のなか不安と期待を交互に見つめていた。すぐ手前の海の水は黒く、そこにはこの世界の闇が覗いているようだった。翻って遠くを眺めると、水色の空に、海の輝ける青。それらが手を取り合ってなだらかな曲線を描いている―それはどこまでも温かい希望そのものだった。
船が気持ちその中頃へと進もうかという頃、わたしの身体は武者震いし始めた。わたしが進む道がいかなるものになるかは、ひとえにこの今という現在にかかっているのだという感覚が、頬を撫でるそよ風とともに胸に吹き込んできた。それを決めるのはこのわたしの黒い瞳なのだという決然たる意志とともに、遠く離れていく船を、明日の自分であるかのように見つめた。
日々の押しの強い男性騎士に対する引け目が、じんわりと溶けていく気がした。
彼らとて、わたしの人生に干渉することはできないのだ。たとえパイを分け合うとき、この先も必ずわたしが譲ることになろうとも。
凛とした花、気高い花でありさえすれば―
船が気持ちその中頃へと進もうかという頃、わたしの身体は武者震いし始めた。わたしが進む道がいかなるものになるかは、ひとえにこの今という現在にかかっているのだという感覚が、頬を撫でるそよ風とともに胸に吹き込んできた。それを決めるのはこのわたしの黒い瞳なのだという決然たる意志とともに、遠く離れていく船を、明日の自分であるかのように見つめた。
日々の押しの強い男性騎士に対する引け目が、じんわりと溶けていく気がした。
彼らとて、わたしの人生に干渉することはできないのだ。たとえパイを分け合うとき、この先も必ずわたしが譲ることになろうとも。
凛とした花、気高い花でありさえすれば―