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償いの形
もしも。

もしも僕に、大学時代親の金をあてどない街遊び(1人外食したり本を買ったりしていただけなのだけど、当然積み重なれば山となる)に費やし結局中退するという過去―罪深い過去―がなければ、まっさらに無邪気な少年のように生きれたのかなあ・・・そう仕事中、ふと思った。

でもすぐに思った。そんな前しか向かないような生き方、つまんないや、と。そして過去を憂いて鬱屈となりかけていながらに、そこはかとない滋味のようなものが胸を満たすのを感じていた。

真摯に悔い改めるということの、それでも白紙には戻れないということの、そうして重いものを背負って歩いていくということの、1つの哀しくも愛すべき生きざまよ。

酔っているとは思わない。淡々としている。でもたしかに、感じ入っている。我ながら、くそ真面目だ。でもたぶんこの感覚を、僕は終生持ち続けることだろう。

それが僕なりの、償いの形なのだと思う。
21/05/26 20:52更新 / 桜庭雪



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