ポエム
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「哀しいね」
静謐な夜の湖面を
静かに小舟を漕いでいる

僕は夜風の音なき音を聴き
星のまたたきを見る

だけど
夜風は頬に触れるや去ってしまうし
星のまたたきを間近で見ることは叶わない


僕は欲張って星に手を伸ばそうとする
その輝きに触れたいと祈りながら

でもどれだけ伸ばしたって届きやしない


星は変わることなくまたたいている

美しい予感でこの胸が溢れるほどに
僕は生きることが空しくなる



不気味なほどのリズムで
湖面はすぐに元に戻る

僕は命ある限り
この小舟を漕ぎ続けなければならないのだ


僕はあらためて湖面を見た

それは相変わらず静かで
僕と同じく風と星に焦がれているようで

「哀しいね」と、僕は笑った
21/03/25 06:13更新 / 桜庭雪



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