ポエム
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未だ見ぬ明日の日々へと
その日も昼下がりに、僕はキャンパスを後にした。バスで向かう先は、自然派のパン屋さん。

授業をないがしろにしているうしろめたさがある一方、悠然と授業を無視できる自分に特権意識のようなものも感じていて、それらの混合したような思いが、バスに揺られるたびに胸深くへと沈んでいく。

京都大学にほど近いバス停からすぐの場所という立地。きらびやかな赤の看板に、フランス語で店名が書かれている洒脱。胸をくすぐられるような心地で、その日食べるパンを優雅に買い込んでいく。買い終わると向かいに渡って、すぐにまたバスを待つ。涼しくたおやかな秋の昼下がり、頬を風に触れ合わせるように。

家に帰ると、待ってましたとばかりに、僕はパンを5、6個食べる。リンゴがごろりと入ったパイ。チョコレートの粒が星のように彩られたスティックパン。あとはなんだっけな・・・僕は食べる。貪るように、食べれなくなるほどまで食べる。満腹にはなりながら僕は思う。もう今日は何もしなくていいのだ、と。そうして僕は逃げていたのだ、未だ見ぬ明日の日々へと。

あとはぐったりするだけと、僕はベッドに座って壁に背を付け、Jポップを延々流し哀愁に浸る。

夕方になると腹の張りが収まってきて、僕は外に出る。地下にあるアパートの部屋から階段を昇って、アスファルトの地上を踏みしめ、秋の夕暮れをゆっくりと歩く。夕闇はもの哀しくも優しかった。それは、変わることなくまた明日が来ることを約束してくれている、そんな優しさだった。
20/09/03 12:27更新 / 桜庭雪



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