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文章を読み返していて思うのは
ここ1年近くの文章を読み返していて思うのは、少なくとも1年ほどの間には、人というのはそう変わらないのだなあということだ。昔の文章の中に、今の自分がれっきとして存在している―そんな感覚を抱いたのだ。

それにしても、僕は手を変え品を変え同じようなテーマについて書いている。儚さ、切なさ、懐かしさ、気高さ・・・。

半年ほど前まで、僕は早晩ネタは尽きるだろうと思っていた。けれど今は思う。文章の切り口というのはそれこそ無限にあり、同じネタ(たとえば"哀しげな瞳")でも光を当てる角度を少しでもずらせば、それはもうまったく違う印象の作品になる。つまりネタとは、際限なく使い回せるものなのだと。

さらに思うのは、そうこうしているうちに、写真家が被写体の見せ方を洗練させていくように、ネタのよりよい見せ方、印象付け方というものを覚えていくことができるんじゃないだろうかということだ。

感覚的な話で申し訳ないのだけど、この次こう展開するのはなしだなとか、そういったことが"見える"ときがある。そんなとき僕は漠然と昔の作品を思い出して照合しているような、そんな感覚がたしかにある。

それを思うと、文章を書くというのは、自分の表現のくせを、それこそ機械学習みたいなメカニズムで修正し続けていくことなんじゃないだろうか?それは、こうこうこういうものだと明確に言語化はできない曖昧な、しかしたしかに厳として存在している、たとえば漠然とした好みのような、そんな直感的なものなのだろう。

その果てに、僕はいかなる文章を、技術を、手にすることができるだろう?自分は変わらなくても文章は変わっていく。ならば僕は、新たな自分に出会うというよりは、新たな技術に出会いに行くのだという心持ちで、これからも文章という名の大海を漕ぎ続けていこう。
21/07/19 19:29更新 / 桜庭雪



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