一番輝くために
わたしは生まれてきたのだろうか。

そんなの嫌いだ。
誰が頼んだんだ。

生まれた時からそうだった。
それを一生背負って生きていくんだと。

幼い頃、列の先頭になれず、
「いちばんがいい！！いちばんがいい！！」と叫んだ事がある。
幼いわたしは訳も分からず、ただそう叫ぶことしかできなかった。

中学生になり、
親の財布からくすねてみんなに奢ったこともあった。
あの頃のわたしには、そうする事でしか関心を集めることができなかった。

大学生になると、
必死に「大学生」になりきり、あたかも自分は優位な存在だと見栄を張った。
それでもわたしはその幻覚の世界が心地よかったのだろう。


社会に出ると、
人の顔色を伺い、上辺だけを作り上げ、
あたかも輝いている様に見せるだけだ。
職場にも、家にも、
「わたし」はどこにもいない。



わたしは輝きたい。
みんな見てよ。かまってよ。認めてよ。
わたしはずっと叫んでいたのだろう。


「わたしをいちばん輝かせてよ」


虚しいね。


今、わたしは何を想う。

わたしは孤独だ。
わたしは一人だ。

しかし、不思議と満ち足りている。

慕ってくれる仲間が。
面倒を見てくれる上司が。
支えてくれる両親や兄弟が。

生まれた時からちゃんとわたしを輝かせてくれていた。
もう一番に輝こうとする必要はないんだと。


わたしの足枷は解けた。


わたしが一番に輝くのではない。
「わたし」という一人の存在が、皆を輝かせる事ができるように。
「わたし」という一人の存在が、わたし自身を輝かせる事ができるようにと。


与えられたものではない。
これはわたしが選んだのだ。


歓喜、わたしは泣く。
喜びに溢れる。
こんなに自由とは素晴らしいものかと。


ここはスタートライン。
銃声、やっと鳴り響いた。