ポエム
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窓際のフィルム
横須賀線の前車両
ボックス席の窓側
そこは僕の特等席

チケットが一枚
上映されるパノラマに
酔い浸りに来たんだ


16時13分

日は眩しく煌めいて
けれどもこの心地良い雑踏が
優しく包み込んでくれる


そっと草木は揺れ
校庭の土埃は無邪気に舞う
うとうとしながら
握る拳は柔らかい


目を閉じている
どんな境遇であれ
全てを受容する平穏に
皆が満ちている


束の間の淡い模様
影はそっと寄り添い
停まる度に起こしてくれたんだ


17時03分 

遠退いていた足音は
次第にコツコツと速くなる
バッグを胸に抱き寄せ
僕の温かさに安堵する


情景が次々に過ぎ去り
それは僕で あれは僕で
それは佳麗で あれは醜穢で


もし願いが一つ叶うなら
生まれ変わっても
僕でありますようにと
 

18時20分

アナウンスとともに
幕は閉じた
ちょっとした気怠さも
なんだか愛おしくてね


肌につく蒸し暑さも
時より靡く風を引き立たせる
それは名脇役


帰り道のソフトクリームは
「あついよね」って
緩やかに滑らかに
そして満足げに溶けていった
20/08/05 15:06更新 / なまこさん



談話室



■作者メッセージ
ただ電車でのらりくらり揺れたくて
仕事を切り上げてそのまま旅に出ました。

ただ電車に乗って
特にどこか行くわけでもなく、
ただ電車に乗っているだけの度。

色んな情景と
色んな思いとが通り過ぎて
それは良い時間でした。

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