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『実験不成功』
目の裏でちらつく羽虫の羽音が鬱陶しくて、異常に強張った手で静止をかける。その瞬間、目がこちらを見ていた。意識は過去へと引き摺り込まれる。いつ、どこで、だれが、あんなことを。何かもわからないものに怯えて縮こまっている。だが、忘れようとしたことは聡明に憶えているから尚の事タチが悪い。何が実験成功だ、ただでさえ脆いと言うのに。
描き殴られたいイデアだったものも、想起を助長するため奥へ引っ込めた。あの呪物は未来を跨がない。

頭が痛い。痛みで強張る手で痛みの元を触る。その瞬間、あの時の目を思い出した。過去に似たような事があった。しかし、思い出せない。いつ、どこで、だれが、私を見ていたのか。何も思い出せないくせして体は恐怖に怯えていた。私が知っているのは過去の私がそれを忘れようとしていた事、中身の無い記憶に踊らされるなんて。何が「やっと忘れられた」だ。何も解決して無いじゃないか。ただでさえ悪意に敏感だと言うのに。
私を綴ったノートも今ではトラウマのフラッシュバックを起こしかねない産物となった。だから目の見えない場所へ隠した。もう私があのノートを書く日はないだろう。
25/01/29 20:39更新 / フラワー党主任



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