ある男の物語
街行く人よ
どうか私の物語を聞いて欲しい
ある日、一人の男が寂れた田舎の村にやってきた
黒いシルクハットを被り真っ黒な礼服に身を包んでいた
顔は真っ青でゲッソリと窶れ果て
黄色く濁った眼だけは
不気味なほどギラギラと輝きを放っていた
村の人は知らなかった
これから起こる出来事を
それからというもの村のなかでは奇異なことが起こり始めた
村の男も女も若者も老人も子どもたちも
ひとりまた一人と消えていった
村の隅々はまるで死んだように静まり返り
あちこちで誰かの啜り泣く声だけが聞こえた
そして男は赤い唇をにんまりと三日月に歪ませ笑いながら
黒いステッキを一振りして去って行った
そこの街行く人よ
どうか私の物語を聞いて欲しい
あれは何だったのか誰にも分からない
誰もいない
風だけが吹き抜ける私の村の物語を
どうか聞いて欲しい
どうか私の物語を聞いて欲しい
ある日、一人の男が寂れた田舎の村にやってきた
黒いシルクハットを被り真っ黒な礼服に身を包んでいた
顔は真っ青でゲッソリと窶れ果て
黄色く濁った眼だけは
不気味なほどギラギラと輝きを放っていた
村の人は知らなかった
これから起こる出来事を
それからというもの村のなかでは奇異なことが起こり始めた
村の男も女も若者も老人も子どもたちも
ひとりまた一人と消えていった
村の隅々はまるで死んだように静まり返り
あちこちで誰かの啜り泣く声だけが聞こえた
そして男は赤い唇をにんまりと三日月に歪ませ笑いながら
黒いステッキを一振りして去って行った
そこの街行く人よ
どうか私の物語を聞いて欲しい
あれは何だったのか誰にも分からない
誰もいない
風だけが吹き抜ける私の村の物語を
どうか聞いて欲しい