ポエム
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幻影の城
幻想(ゆめ)ばかり追いかける君は
君の周りではしゃぎ回るカゲロウを
用意周到な網で捕まえては
荒れ狂う波の中へと沈めるけれど
あからさまに眩しすぎる人工の灯りが
君の心に暗い陰を残し
やがて、絶望の渦へと駆り立ててゆくんだ

下腹部の熱くたぎるような、うねりとは裏腹に
冷めた鉄のような冷酷さが君を苦しめて離さない

君はいつでも持ち前の笑顔と
リップサービスとを絶やすことなく
妖艶なニンフェット達に
淫らな戯れ事を囁きかけているけれど
君の奥に潜む微かな声が大きく首を振りながら
ズタズタに裂けた心の手綱を引き締めている

あぁ、幻想の庭は跡形も無くなり
ただ、虚しさだけが隙間風のように通り過ぎてゆくよ
まるで夢から醒めた夢の続きが悪夢であるかのように
君はビッショリと冷や汗をかき
また幻をみようと見えない虹の行方を探している

君のなかに棲む幼子が泣き叫びながら
記憶の片隅に置き忘れた飴玉を
掴み取ろうとしているけれど
甘酸っぱい副産物は君の手にはおさまることなく
溶けてなくなってしまうんだ

うなだれた君の瞳は叶わぬ真の欲望を
『もはやこれも夢なのだ』と諦めて
沈痛な面持ちで深い溜め息をつくけれど
うずくような傷みが日常の鮮やかさすら吹き飛ばし
憂鬱な気分を増幅させてしまう

僕は君を助け出したい一心で手を差しのべるのに
君は凍った手の平で無惨にも僕の腕を払い除け
そしらぬ顔で雑多な人混みのなかへと
紛れ込んでいってしまったね

また誰か他の犠牲者(オンナ)を探しに行くのかい?
そこには君の追い求める物は何もないのに
ただ、君の口から吐き出される煙草の煙のように
気だるく精神を蝕んでいくだけで
陽の光を浴びてカサカサに乾いた砂となって
風に吹き飛ばされてしまうよ

僕に何か出来ることはないのだろうか?
愛しき人よ
君が瞳を上げ大きく手を降ってくれさえすれば、
いますぐにでも君の元へと翔んでゆくのに・・・
24/08/16 01:31更新 / 秋乃 夕陽



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