『水槽に沈めた命』
水分子の塊の中で揺蕩う光たちは
ダイヤのように輝いて、悲鳴のように尖っている。
宝石とは、そこを通ったがために散り散りにされた、
光の破片たち、事故映像。
だから水も、涙も、みんな宝石。
涙は光るから、かなしい。
うつくしいとかなしいはたぶん、
おんなじ人が、ちがう服を着てる。
ちがう服を着た今日のあなたは、ちがう誰か?
その目、
わたしの瞼に刺さったままぬけない、その光。
ガラス越しに見るあなたが、いちばんきれいだって、
わたしはあなたに、言えない。
きれいなものは、すこし自分が反射するから、
すきなんだよ。
それをひとは、たいせつってよぶ。