ポエム
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夜霧に溶ける硫黄の匂い
「こんな冷える晩は夜霧が立ちさうだね」

「待ちねえ、外に行く気か
 それはやめたはうが良い
 ……遠くから聴こえないかい」

……ポクポクポクポク…

言はれて耳をすませば遠くからシステマテイツクな音がする
合はせて太鼓や篠笛、神楽鈴のやうな音も聴こえてきた

ふつと燈りが消えたと思ふと、ぼうつと男の顔が浮かび上がる
吐息とともに煙草の匂ひが広がる

しかし煙草ではない嫌あな匂ひが鼻を突く
これは……さうだ、髪を焦がしたときのやうな……

「じつとするんだよ……」

太鼓の音がドンドンドンドンと大きくなる
女の歌声か泣き声とも分からない咆哮もする
シャンシャンシャンシャン
心臟の音が太鼓の音と判別がつかない
なにかに足を踏まれる氣すらする
私はただ息を殺した……

心音を鼓音と誤解していたのに気づく頃、私は衣が擦れぬやう男のはうを向ひた
だが、ぽつかり空いた穴でもあつたかのやうに、熱を感じることはなかつた
熱を恋しがるかのやうに冷たい風が吹き抜ける
その風は灰皿にあつた煙草の火を消していつた
22/07/23 00:11更新 / きうきう



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