ポエム
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一男子の青春
これはある一男子の、
一弾指の青春だ

そう、一弾指の青春だ

暑い暑い夏の日
熱射が僕の肌を焦がす
高く高く登る入道雲を背に受けて
坂を越え
川を越え
虹も超える勢いで
僕は自転車を走らす

街に響く警報のサイレン
ラジオから流れる玉音放送
人々の阿鼻叫喚

僕は知らないふりをして自転車を走らす
一生懸命車輪を回す
回して
回されて
回して
回されて

でもどうしてかな
いつも最期に失敗するんだ

巨星が落ち
巨星が堕ちる
僕の目から光を奪い
鼓膜を破き
五臓六腑を破裂させる

悲しいかな悲しいよ
こんな、一弾指で終わる青春なんて
もううんざりだよ

誰かどうかお願いだ
僕の車輪を止めておくれ



20/08/06 01:27更新 / きうきう



談話室



■作者メッセージ
「僕」とは誰だと思いますか。
私は、死んでも死にきれず同じ青春を繰り返す地縛霊のような、この世に在らざるものを想像しました。

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