ひめよ
「ヒメヨちゃんって居たでしょう
ほら、お隣の林さんとこの娘さん。
あの子、なんだかおかしくなっちゃったんだって。」
ひめよはひらがなだ
できれば漢字の名前が良かったなと思う
ひめよはその辺にいる小人たちと話をすることができるし
何回もタイムスリップしてエンドレスデジャブ遊びができる
ひめよは1日のうちに196個の気になることがある
多い日には、203個ぐらい、何かが気になる日もある
隣のおじさんはいつも6時半に起きるのに、今日は
何故か7時23分に起きた
なぜ?
閉店間際にTSUTAYAに行ったら
店員さんから雲のような紫のシミが滲み出ていた
なんで?
ひめよはまだ生きてないといけない
お酒に飲み込まれて京都の道端で倒れた時
一反もめんがひめよに話しかけた
「強い強い香水の匂いがするような女として生きなさい」
ひゅるる…
お酒はまだひめよの体を支配していたのだけれど
次の日、うんと匂いが強い香水を買って
深夜の喫茶店の鏡でうなじに付けてみたのだけれど
ひめよは強い女になれた?
あと何日生きていられるのだろう
今、ひめよにとって1番幸せなことは
みどりを見に行くこと
みどりは大きい大きい大きい
みどりに囲まれて青空が少し見えるところが良い
さわさわさわ
髪の毛が口の中に入ってしまった
光がちらちらしていて
みどりがさわさわしているのを
ひめよはずっと見ていた
ずっと見ることが1番落ち着くこと
ひめよはこれが1番好き
ひめよはいつからか
これ以外の時間はひめよじゃなくなって生きている
他の誰かの仮面を被って生きている
そうしないと涙が出てくる時がある
ひめよは
ひめよで居たいから
時々悲しくなったら
デジャブ遊びをして
ここに来る
みどり