ポエム
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火酒
カラカラになった鼻に染み込む外楼の匂い

草臥れた躰に燻る腹が鼓を鳴らす

暖簾を濳って見えた光景はまさにユートピア

大自然から養った大木から切り削った机と丸椅子に腰掛ける

加爾基の抜けた清涼水を口に含み舌に通して喉に通す

戦場で乾涸びた油塗れの喉に興奮が駆け巡る

嗚呼、もう待ち切れない

汗で黄ばんだ頬と項を熱々の搾りで念入りに洗えばそこは極楽浄土

暫くして机の上には金の脂で立派に輝く鰊、贅沢に厚切りの牛肉、そして丸々と太った大層な瓶

躰の本能が警笛を鳴らす

今すぐ獣のように齧り付けと

付き従うことになんの躊躇いも無かった

無我夢中に犬歯を光らせ口の中に放り込み、次いで咀嚼する

そして間髪入れずに人肌に温もった神の叡智を喉にグイッと通す

刹那、躰に雷雨のような衝撃が快楽となって体躯を駆け巡る

ああ

これだ

私はこの瞬間の為に生き、そして死ぬのだ

我々はこの世に生まれ落ちた囚人

然れどこの世をと地獄呼ぶには余りに地獄成分が温すぎた

敢えていうなら……この世界は天国と地獄のブランデー

知らない奴はこの悦びを知らず軈て骨になっていくだろう


全ての人へ告ぐ

この世界は地獄よりも天国らしい

探せ!

この世界の極楽を!

もっと見渡せば天国はきっとある!

逃げろ!

この世の地獄を敢えて耐え忍ぶ必要は無い

しかし逃げ続けるな!

その痛みはきっと天国を見つけた時辛さが辛味となって酒の肴となるだろう!


其れを見つけ出すまでどうか生きてくれ!
18/09/29 23:23更新 / カフカ



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