広い世界の片隅に埋もれた
たったひとつの小さな物語

目を合わせるように始まった
決まっていた距離を二人で縮め

必死に語り繋ぎ
叫ぶように歌い綴った
幸せの流れに逆らって
傷だらけになりながら
がむしゃらに限られた時間にもがいた

プロローグのその瞬間から
完成されたエピローグ
枝分かれした歪なシナリオ
交じり合っては離れまた重なった

燃え尽きることだけを
願うあなた
静かに溶け合うことだけを
望んだわたし

何もかも叶うはずがなかった
解りきっていたのに
どうして惹かれ合ったの

愛おしい日々
優しい言葉と残酷な描写たち
振り返ることも見据えることも
許されなかった

間違いだらけの各々の終着地点は
想像もつかない程
遠く離れていたのに
気付かないふりして

躓き叫ぶ声も空しく
溶け合うことなく
未完成のまま終止符にのまれた

最期に見たあなたの姿

燃え尽きることなく
ただ呆然と途切れた糸を
握り締めていたね


ねえあの物語は
たった二人の役者の残像と
熱を残したままの景色だけとなり
どんなエンディングを迎えたのか
いまもあの場所で
二人手を繋ぎ
何処へも行けず
歌い続けているのだろうか

広い世界の片隅で
だれにも見つからない場所で
埋もれ続けることを決めた物語

わたしの中で永遠に
その小さな息吹きを感じながら
想いを巡らせる
なにより大切で
忘れられない
たったひとつの物語