こんなたった一言

言ってあげられなかった

ほんとはね

ほんとうは

ううんやめておく


羽ばたくことを赦されなかった

その小さな言葉は

こころのなか

いろんなとこ駆け巡って

あつくなって

遂にはとけて

瞳から

頬を伝った


ごめんね

ほんとにごめんね

あのひとのために育った

ちいさな言葉

またひとつ消えていった


きっと会えば

きっと話せば

生まれてしまう

放ってしまう

そうしたらきっと

始まってしまう

終わってしまう

そんな魔法の言葉なんだよ


いいよ

こんなたった一言

あなたにだけは渡せない

あなたにだけは届けられない

それさえ伝わることもない


ほんとはね

ほんとうは

ううんやめておく


いいよね

それでいいよ

いいんだよ

なんどもでも駆け巡って

また頬を伝う


そっとやわらかく

ぬくもりだけを残して。